こんにちは。
今回は、ウーシー・バイオロジクス(薬明生物技術)について、掘り下げていきます。
ウーシー ・バイオロジクス(無錫薬明生物技術)
正式名称は无锡药明生物技术股份有限公司(無錫薬明生物技術 股份 有限公司)です。
中国では、 薬明生物 と呼ばれているので、ウーシー・アップテックと同じく、やっぱりウーシー( 無錫 )と一文字も入っていないんですね。笑
本社概要
本社 | 中国江蘇省無錫市 |
従業員数 | 6000名強 |
設立年月日 | 2010年 |
資本金 | 89億人民元 |
オフィス | 上海、蘇州、杭州、シンガポール、アメリカ、アイルランド、ドイツ |
日本オフィス | なし |
上場先 | 香港証券会社(証券コード:2269) |
2020年総収益 | 56.12億人民元 |
2020年粗利益 | 25.33億人民元 |
2020年総収益成長率 | 40% |
2020年粗利益成長率 | 52% |
ウェブサイト | https://www.wuxibiologics.com/ |
この会社は、前回ご紹介したウーシー・アップテックの関連会社です。
ウーシー・バイオロジクス(薬明生物) が ウーシー・アップテックの子会社であると、様々なメディアで記載されていることがあります。ウーシー・アップテックの李革CEO且つ董事長※が ウーシー・バイオロジクスでも同様に董事長であるため、関連会社であることは間違いないですが、2014年にウーシー。アップテック傘下からスピンオフという形で成立しており、現在実質的にはほぼ独立しています。
公式ウェブサイト上でも、
ウーシー・バイオロジクス(薬明生物)の投資会社部門から、無錫薬明康徳企業管理有限公司を通って、 ウーシー・バイオロジクス(薬明生物) に出資されるようになっています。
※ 董事長 :中華圏の会長
事業内容
- CRO/CDMO事業 (人民元)
- Pre-IND 28.00億 (非臨床試験;169件)
- Post-IND 27.24億 (Phase1:103件、Phase2:32件、Phase3:28件、商業用製造:2件)
- その他 0.87億 (研究材料の生成、滅菌保証プログラム、臨床試験、および応用分子腫瘍研究のサービス)
合計:56.12億人民元
- 上の表「その他」:子会社 平湖优谱生物技术有限公司、博格隆(上海)生物技术有限公司の売上を含む
- 中国外からの収益(人民元);31.47億(北アメリカ:24.79億、ヨーロッパ:4.46億、その他:2.22億)
- 中国内からの収益:24.64億人民元
CDMO業界について
バイオ医薬品業界では、候補物質の発見、研究開発および生産機能の何処かの工程か若しくはすべてを経験豊富なCDMO(特に統合系のcdmo)のビジネスモデルにアウトソーシングし、双方の技術、リソース、及びインフラを最大限活用する傾向があります。
製薬会社にとって、先進バイオ医薬品の複雑なインフラに自己投資することは、コストがかかるだけでなくリスクも大きいのです。そのため、大手製薬会社は、製品投入、コスト削減、サプライチェーンの多角化を迫られ、経験豊富なCDMOへのアウトソーシングを推進しています。一方で、バイオ医薬品のアウトソーシングは、能力や生産能力のない中小バイオ企業が製薬市場に参入するために不可欠なパートナーとなっています。
CDMOは自社のサービスチェーンを継続的に拡大し、クライアントと長期的で深い戦略的協力関系を構築することによって、エンドツーエンドの業界サプライチェーンモデルに段階的に参加することができます。これにより顧客の粘着性や満足度が高まり、効率化やコスト削減、資産負担の低減にもつながります。
バイオ医薬品業界は、新興企業から多国籍企業に至るまで、原液、製剤、さらにはオールインワンサービスへの高まる需要を満たすために、敏捷で信頼性の高い、認定されたパートナーを常に求めています。
CDMOの需要は今後も続き、バイオ製薬会社はアウトソーシングを増やすことになると予想されます。世界のバイオ医薬品CDMO市場規模は、2025年までに169億米国ドル、5年間の年平均成長率は11.2%と予測されています。
抜粋: http://emweb.securities.eastmoney.com/PC_HKF10/BusinessExpectation/index?type=web&code=02269&color=b
CDMO事業:
- 二重特異性モノクローナル抗体技術WuXiBody®プラットフォーム
- 2020年:29プロジェクト
- 抗体薬物複合体 (Antibody-drug conjugate, ADC)プラットフォーム
- 2020年:40プロジェクト
- WuXia細胞系研究開発プラットフォーム
- WuXiUP連続細胞培養プロセスプラットフォーム
WuXiBody® について
WuXiBody®は、WuXi Biologicsが開発した革新的な独自技術のプラットフォームで、拡大する二重特異性抗体の分野に対応しています。新規のエンジニアリングに基づいたこのプラットフォームは、医薬品の開発プロセスを6~18ヶ月早めることができ、製造コストを大幅に削減することができます。 WuXiBody® 二重特異性抗体プラットフォームは、ほとんどすべてのモノクローナル抗体(mAb)の配列ペアを二重特異性コンストラクトに組み入れることができ、そのユニークな構造的柔軟性により、異なる価数(例えば、2、3または4つの結合部位)の様々なフォーマットを構築するのに便利なプラットフォームです。
- 開発期間を6~18ヶ月短縮
- 製造コストを最大で90%削減
- 流加培養と濃縮流加培養の両方の生産に使用可能
- CHO細胞※での高いタンパク質発現(流加培養で5g/L、濃縮流加培養で35g/L)
- 凝集の問題がない
- 非常に安定している。>血清中、37℃で2週間以上
- 溶解性に問題なし > 30mg/ml以上
- CHO細胞:チャイニーズハムスター卵巣細胞、CHO(Chinese hamster ovary cell)治療用のタンパク質生産に欠かせない宿主細胞。
ADCについて: WuXi XDC の設立
2021年5月、ADCを含むバイオコンジュゲーションの製造に特化した開発製造受託組織「WuXi XDC」を新たに設立しました。WuXi Biologics社が1億2千万ドルを出資して60%の株式を取得し、WuXi STA社(ウーシー・アップテックの子会社)が8千万ドルを出資して40%の株式を取得するジョイントベンチャーです。同社は、WuXi Biologics社の非完全子会社となります。
この会社を中心として、ADCプラットフォームのプロジェクトを受託しております。
中国市場のADC新薬の開発状況について
現在、中国国内で承認発売されている中国製のADC新薬は1つです。
2021年6月9日、中国国家薬監督局(NMPA)は、少なくとも2系統の化学療法を受けたHER2過剰発現の局所進行または転移性胃がん(胃食道結合部腺癌を含む)の患者に対して、栄昌生物(HK,09995)が上市申請していた「注射用のDisitamab(商品名:愛地希)の発売を優先審査の承認手続きを経て条件付きで承認しました。
DisitamabはHER2を標的とする抗体薬物複合薬(ADC)で、ヒト上皮成長因子受容体2 (HER2)抗体の部分、コネクチと細胞毒性薬のモノメチルアウリスタチン(MMAE)が含まれている。今回の承認は、胃がんⅡ期の臨床試験に基づいています。
現在、HER2のADCが世界で販売されているのは、ロシュのKadcyla、アストラゼネカ/第一三共のEnhertu、そして今回承認された 栄昌生物(HK,09995)の Disitamabの3つだけです。このうち、ロシュのKadcylaはすでに2020年中国で承認を得ており、中国で初めて承認されたADC薬となっています。
一方で、様々な中国の製薬会社も、ADC薬における臨床試験を既に申請を行っています。一覧は以下の通り。(右側は候補薬の数を示しています。)
4位ハンルイ医薬は日本市場にも進出している製薬会社なので、関心のある方は以下の記事もお読みください。
WuXiaTMについて
CHO-K1プラットフォーム – 理想的な cDNAからGMP生産までの理想的なソリューション
WuXi Biologicsは、様々なバイオ治療薬のための包括的な哺乳類細胞株開発(CLD)能力を提供しています。私たちのプログラムは通常、お客様から提供されたDNAやタンパク質の配列から始まり、高収量で特性の整った安定したシングルクローンを提供することで完成いたします。
詳細:https://www.wuxibiologics.com/Services__Solutions-Technologies-WuXia.html
WuXiUPTMについて
WuXi Biologicsでは、連続製造プロセス技術を強化灌流培養(IPC)および連続直接製品捕捉(CDPC)と組み合わせて、WuXiUPTM技術プラットフォームを形成しています。このプラットフォームには、ATF(Alternating Tangential Flow)、BioSMB(Bio-Simulated Moving Bed)、PCC(Periodic Counter-Current Chromatography)、ラマン分光法などの最先端の装置が統合されています。WuXiUPTMプラットフォームは、培地やバッファーの消費に伴うコストを削減しながら生産性を向上させることができるため、大きなメリットがあります。
詳細:https://www.wuxibiologics.com/Services__Solutions-Technologies-Continuous_Manufacturing_Process.html
パートナーシップ:
Oxford BioTherapeutics
AC immune
OncoC4
Antengene
など
参考:ウーシー・バイオロジクスと独大手製薬バイエルとアストロゼネカ
2020年12月、独大手製薬会社のバイエルが、ドイツ西部の製薬製造工場を ウーシー・バイオロジクスに譲渡しました。
2021年7月26日、ウーシー・バイオロジクスは、ドイツ当局よりGMP製造許可を獲得しました。
このドイツの製造工場では、アストロゼネカと新型コロナウイルスワクチンの製造受託契約を締結しています。
日本企業とのパートナー
Funakoshi;https://www.funakoshi.co.jp/contents/80120
株価チャート(HK,2269)
2020年11月、1つの株式を3つに分ける株式分割を実施。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、ウーシー・バイオテックについて紹介しました。
規模や株価からどうしても、ウーシーー・アップテックと比べられることも多いですが、この会社も中国の製薬市場を引っ張っていく大事な存在といえそうです。