製薬業界では欠かせないCRO(開発業務支援機関)企業。
新薬は、世の中に出るまでに沢山のプロセスを踏み、有効性や安全性を確認されたのちFDAやPMDA、NMPAより承認を受けて製造販売を行うようになります。しかし、実際は製薬会社はその会社単体では新薬開発プロセスを全てカバーすることができないため、(更に人件費も安くすむため)アウトソーシングの需要が高まっています。
そのため、CRO業界が伸びているということは、製薬業界も伸びているといっても過言ではありません。
今回は、中国にどのようなCROがあるのか知りたいという要望にお応えして、世界のCRO規模と中国のCRO規模をランキング形式で比較してみました。
※今回は、ランキングにCROとCDMO企業が出てきます。
新薬の流れやCRO及びCDMOがどこに噛んでいるかは、以下のサイトや画像をご参照ください。
CRO/CDMO注釈
- CRO
-
Contract Research Organization(中国名:医药研发外包)
開発業務受託機関
企業の委託を受け、医薬品開発業務の一部を代行する機関。治験の場合には製薬会社の依頼により、患者さんの基本条件の確認や治験をおこなう病院の紹介などの治験初期の申し込みセンター業務なども受託する。 - CDMO
-
Contract Development Manufacturing Organization(中国名:医药生产外包)
医薬品受託製造開発機関
企業の委託を受け、医薬品製造のみならず開発まで代行する機関 -
CDMOの対比として、CMO(医薬品受託製造機関)がよく言われる。
日本ではCDMO企業は少なく、その殆どがCMO企業。
中国CROの歴史
CROは20世紀70年代からアメリカを起点としてスタートしました。中国CRO産業は欧米より発展したのは、かなり遅めで、十数年余り遅れてCROが少しずつ普及していきます。
元々、中国CROはジェネリック医薬品の受託研究からスタートし発展してきましたが、
2000年~2004年に藥明康德、睿智化學、泰格醫藥など、新薬開発の中国国内受託CROが次々と設立しました。
そして、2017年以降国内CRO産業の発展は加速していき現在にいたります。
一層中国CRO産業が発展した政策
「医薬品市販承認取得者(MAH)制度」
中華人民共和国薬品管理法修正案提出。
「ジェネリック医薬品の品質と治療効果一致性評価関係事項の公告」
国務院弁公庁「ジェネリック医薬品品質、治療効果一致性評価に関する意見」発表。
ジェネリック医薬品「4+7計画」
医薬品集中調達試行計画(National Drug Centralized Procurement Pilot Scheme)を中国の国家医療保険局(SMIA)が発表。
世界CRO・CDMOトップ10ランキング2021版
ランキング | 企業 | 分類(CXO) | 2020年収益 (US億ドル) | 前年比 | 2020年従業員数 |
---|---|---|---|---|---|
1 | LabCorp (旧Covance) | CRO | 139.8 | 21% | 75,000 |
2 | IQVIA | CRO | 113.6 | 2.4% | 70,000 |
3 | ICON+PRA | CRO | 59.8 | 1.9% | 35,000 |
4 | Lonza | CDMO | 49.5 | 12.5% | 14,000 |
5 | PPD (Thermo Fisher) | CRO、CDMO | 46.8 | 16.1% | 26,000 |
6 | Syneos | CRO | 44.2 | -5.6% | 25,000 |
7 | WuXi (薬明康德+薬明生物) | CRO、CDMO | 32.6 | 31.4% | 32,000 |
8 | Catalent | CDMO | 30.9 | 22.9% | 15,000 |
9 | Charles River | CRO | 29.2 | 11.5% | 17,000 |
10 | Parexel | CRO | 25.0 | NA | 19,000 |
世界トップ10と呼ばれるCRO企業は収益が25億米国ドル以上超えておりますが、製薬会社の規模感とはまた全く違いますね。
25億ドルというのは、目安ですが日本の大正製薬グループのような感覚でしょうか。
パイプラインの情報は、チクチクさんのホームページを参考にしております。
参考:中国進出中の外資系CRO企業の割合(2018年)
残念ながら、今回の最新調査で中国市場に外資CROがどの程度進出しているのか確認することが出来ませんでしたが、2018年時点の進出状況を調べている方がいらっしゃいましたので、紹介します。
中国市場での国内外CRO企業シェア率(前臨床・臨床含む)
この表の外資CROだけピックアップすると、Genscript Biotechが3%、CrownBio、IQVIAとParexelが中国市場で2%シェアしているようです。
中国市場での国内外CRO企業シェア率(臨床のみ)
臨床試験を行う国内外CROに限定したシェア率ですが、IQVIAが8.1%、Parexelが5.8%、Covanceが3.0%となっております。
中国CROのTigermed(泰格医薬)が1.4%とトップの占有率を誇っていますね。
続いて、中国CROのトップ15ランキングの集計した結果を御覧ください。
中国CROは調べているうちに15社になったため、全て公開します。
中国CRO・CDMOトップ15ランキング2021版
ランキング | 企業 | 銘柄 | 分類(CXO) | 2020年収益 (US億ドル) | 前年比 |
---|---|---|---|---|---|
1 | WuXi AppTec (薬明康德) | 603259.SH/2359.HK | CRO、CDMO | 25.3 | 21% |
2 | WuXi Biologics (薬明生物) | 2269.HK | CRO、CDMO | 8.68 | 40% |
3 | Pharmaron Beijing (康龍化成) | 300759.SZ/3759.HK | CDMO | 7.85 | 37% |
4 | Tigermed (泰格医薬) | 300347.SZ | CRO | 4.88 | 14% |
5 | Asymchem Laboratories (凱莱英) | 2821.HK | CDMO | 4.87 | 28% |
6 | Zhejiang Jiuzhou (九洲薬業) | 603456.SH | CDMO | 4.1 | 31% |
7 | Porton Pharma Solutions (博腾股份) | 300363.SZ | CDMO | 3.21 | 33% |
8 | ChemPartner PharmaTech Co Ltd (睿智医薬) | 300149.SZ | CRO、CDMO | 2.29 | 11% |
9 | JOINN Lab (北京昭衍新薬) | 6127.HK/603127.SH | CRO | 1.65 | 68% |
10 | PharmaBlock Sciences (Nanjing), Inc. (薬石科技) | 300725.SZ | CDMO | 1.58 | 58% |
11 | Frontage Holdings (方達控股) | 1521.HK | CRO | 1.27 | 17% |
12 | VIVA Biotech (維亞生物) | 1873.HK | CRO | 1.08 | 115% |
13 | Shanghai Medicilon (美迪西) | 688202.SH | CRO | 1.03 | 48% |
14 | Shanghai Haoyuan (皓元医薬) | 688131.SH | CRO | 0.98 | 55% |
15 | Sinopep Allsino Bio (諾泰生物) | 688076.SH | CDMO | 0.88 | 52% |
こうやって比べてみると、中国ではWuXi(ウーシー)の一人勝ち状態ということがわかりますね。
また、中国ではCDMO産業が強いこともわかります。
2020年、中国はコロナ禍をいち早く抜けたようで、海外巨大CROに比べ、2019年からの成長率が著しいことも特記すべきことでしょう。
115%って計算間違いかと思いました…。
一方で、WuXi(ウーシー)はCDMOとCROが合わさった合計金額なので、純粋なCROランキングと言えないのでは?
と、疑問を持たれる方がいるかもしれません。
そこで、純粋にCROランキングでも調べてみました。やはりWuXiはダントツですね。
中国CROトップ4ランキング2021版
ランキング | 企業 | 2020年収益 (US億ドル) | 前年比 | 中国国内向け 収益割合 |
---|---|---|---|---|
1 | WuXi AppTec (薬明康德) | 17.33 | 23% | 24% |
2 | Pharmaron Beijing (康龍化成) | 6.02 | 39% | 13% |
3 | Tigermed (泰格医薬) | 4.88 | 13% | 59% |
4 | ChemPartner PharmaTech Co Ltd (睿智医薬) | 1.85 | 9% | 37% |
このランキングから、中国製薬会社からの受託はまだまだ割合としては低く、海外外資(日本の製薬会社含む)から入る収益の方が多いことがわかりました。
そういった点で、Tigermed(泰格医薬)は半数を国内向けで売上を立てており、少しローカライズされていますね。
また、それぞれ特徴があり泰格医薬は臨床試験(治験)割合が高く、他のCRO企業は全て非臨床試験に注力されています。
そのため、臨床試験CROであれば、Tigermed(泰格医薬)一強といえるでしょう。
まとめ
今回は、中国のCRO について掘り下げてきました。
中国語でもCROランキングをまとめているウェブサイトが殆どなかったため、今回一つ一つ調べました。
結果、トップ10でなくてトップ15になってしまいましたが、参考になりましたか。
中国でCROでなくCDMOが多い理由については、MAH制度が関連していると言われております。国産新薬の誕生は今後CRO/CDMOともに発展の加速につながっていくでしょう。
本記事では詳しく記載できなかった各CROの特徴ですが、また成長が見られる企業については掘り下げていく予定です。
今後も調べてほしい製薬会社があれば、いつでもリクエストをください!